甘い声はアブナイシビレ
「たのんだぞ、弟。葵、明日な」そう言って、振り向きもせずに帰ってしまった。

「悠斗、家入ろう」頭がクラクラして一人で立つこともままならなくて、べったり悠斗に寄りかかっている。
 悠斗が動かないとどうにも足が動かない。

「ねーちゃん…、あの人誰?」
 龍一さんの帰って行った方向を見ながら不思議そうにつぶやく。

「えっ!? あっ、知穂のお兄さんだけど…」間違っては、ないよね・・。

「知穂さんの? うーん…、だからかな…」何か腑に落ちない様子の悠斗。

「なんでそんなこと聞くの?」
「同じこと言われた気がすんだよな・・。俺、あの人に会ったことあるかも…」

「えっ?」同じことって? 頭がクラクラして、龍一さんが悠斗に言った言葉を思い出せない…。

「まさか、だよな・・? って重めーな! まったく!」
「ゴ、ゴメン」親に気がつかれないように、悠斗に部屋まで運んでもらって、ベッドに倒れ込んだ。

 悠斗と龍一さんに接点なんて無いよね…? それに明日、何の話しするんだろう…。
いろいろ考えるまでもなく、直ぐに寝てしまった・・。
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