硝子の破片

春樹Side

菜々子。


正樹はもう一度心で呟いてみる。


記憶の中の彼女は笑ったり、怒ったりしていた。


けれど、一番強く印象に残っているのは泣き顔だった。


『私のせいなの。私が悪いの』


泣きじゃくった菜々子は壊れたテープのように、同じ言葉を繰り返す。


あれは偶然の事故だった。


残された者はそう割り切るしかない。


祐樹は真面目で、普段から交通ルールを厳守しているような性格だったと、今更菜々子を責めたところで、何も変わりはしない。
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