必死こいて桜姫やってやんよ!

首ったけ





「やたらと綺麗なモデルみたいな母親に殺し屋みてぇな鋭い顔の父親、それと無愛想な息子とかぐや姫みてぇな娘」



憂依が言ったのは紛れもなくあたし達…10年前の紀憂家だ。




「一目見て、当時の噂通りの家族だと思った」



色白で綺麗な母と強面な父。

瑠璃はそのどちらにも似ていて、逆にあたしはどちらにも似ていなかった。

誰かが言った最初の一言が、瞬く間に広まった。

否定の言葉なんて元からなかったのかの様に。




“違う所の子ではないのか”




まだまだ…今よりも小さい会社だったから、露骨にいじめられもしたし、散々な言葉も浴びた。



でも、家族の前では涙を見せたくなかった。



泣く時はいつも裏庭や、帰ってきてから自分の部屋で。


だから誰にも見られるハズがない…と思っていた、んだけどな。




「聞こえ過ぎてて陰口とは言えない陰口を言う大人に、遠巻きで様子を見るその子供達。
俺が実際にお前を見たのはその日だけ…尚且(なおか)つ短時間だったけど、お前の両親も強く否定はしてなかったから尚更今後の状況は悪くなるだろうと思った」




実際、そうだったろ



とあたしの頭を包むように撫でながら憂依は言った。




「それでもお前はあの場で1番背筋を伸ばして、陰口なんて本当に聞こえてない様に振る舞ってた」




聞こえてた。全部。

だから耐える為に歯を食い縛って口角あげて。

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ見てた。




「そのお前が、」


「…?」


「どんな最低な言葉を言われても揺らがなかったお前が表情を失くしたのを見た」





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