俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
春馬は少し目を伏せた。


「俺こそ………」


「おう?」


「俺こそいろいろ、あ…」


「あ?」


「あ……」


「ん?」


「…………」


口ごもる春馬に俺はにやにやが止まらなかった。


なんだこれ。


こりゃ愛子ちゃんがメロメロになるのも仕方ねぇ。


そこで、春馬は俺の頭を殴った。


「いてッ」


俺は笑いながら大げさな声を出す。


「おま、ひでぇ~」


爆笑する俺に春馬は不機嫌な顔で耳を赤くさせていた。


「あほか。もう帰る」


春馬は鞄を持つとぶっきらぼうに立ち上がった。


あれ、マジで怒らせた?


「待てよ、んじゃ俺も加奈子んとこ行く」


俺は春馬を追いかけるように教室を出た。


そしてドアを潜り抜けながらそのまま春馬を追い抜くと、隣の加奈子の待つ教室へ向かった。


加奈子の教室へ入る直前、クルリと振り返り春馬を見る。


「あ、愛子ちゃんにもよろしく~」


俺は春馬にニカッと笑った。


「あぁ」


春馬はもうすっかり、いつもの気だるい無表情に戻っていた。


「んじゃ~また明日な~!」



俺の言葉に春馬の口元が小さく微笑んだ気がした。


ありがとな、春馬


どんなに離れても、春馬の親友は俺だけだ。


そして、また俺の親友もお前だけ。


卒業式を前に、俺の心は青く、晴れ渡っていた。




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