俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
加奈子ちゃんをいじめても、なんの解決にもならないのに――…


加奈子ちゃんの前ではなぜか、素の心が出てしまう。






「ごめんね…?」


ぽつりと


加奈子ちゃんが沈黙を破るように謝った。


「…………」


俺が加奈子ちゃんを振り返ってみると


加奈子ちゃんは足を止めて目に涙をためていた。


「…私と話してもつまんないよね」


加奈子ちゃんがうつむくと、
ぽたりと一粒涙が落ちた。


「…なんで泣いてんの?」


俺は加奈子ちゃんの涙を見て、なぜか不思議と気持ちが落ち着いていった。


「ヒロキくんに嫌われたくないから…」


加奈子ちゃんはいつも真っ直ぐな言葉をくれる。


「…泣くほど俺に嫌われたくないの?」


「うん」


加奈子ちゃんの言葉に


俺の中のなにかが少しずつ回復していくのがわかった。


俺は加奈子ちゃんにゆっくり近付いた。


「こんな俺のどこが良いの?」


俺は気持ちとは裏腹に
きっと今冷たい顔をしてる。


「俺は何も持ってねぇよ?」


家もでかくなければ
楽器なんて楽譜も読めない。



こんな俺のどこが好きなの?


こんな俺でも好きでいてくれるの?



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