俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~

春馬との電話

――数日後


夕食と風呂を済ませた俺はアルバムを聴きながらまた悶々としていた。


「はぁ―…」


毎晩、辛気くさいため息ばかり出る。


つ―か…

加奈子ちゃんの気持ちは分かってるからあとは俺がOKさえ出せば言い訳で。


だけど俺は自信がなかった。


両想いというやつを経験した事がない俺は、目の前にあるそれにビビっていた。


まじで俺は大丈夫なんだろうか


なんせ真剣に俺を好きな子なんて今まで居なかった。


それが嬉しくもあり
同等に向き合うのが怖い。


軽く軽くしか人付き合いをして来なかった今までの人生を悔やみ出す。


しかも加奈子ちゃんは愛子ちゃんの親友で。


愛子ちゃんにあれだけ真剣だった自分の気持ちが


こんなにも早く別の誰かに向いてしまうなんて、自分が自分で信じられなかった。


あんだけ愛子ちゃんにアピールしまくってその親友に乗り換えかよ…


優しくされりゃ誰でも好きになるみたいな


俺はそんな自分にも嫌悪感を抱いていた。


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