ドッペルゲンガー
「こいつはな、自分の息子とその親友を犠牲にしてまで富と名声を欲しがった男だ。
しかし、こいつは踏みとどまった。やはりこいつも血の通った人間だ。
悪魔にはなりきれなかった。その結果がこれだ。富も名声も肉体も全て捨てた男の姿だ。
人に寄生することでしか自分を表せない‥ククク、あわれな奴だ。」


海斗は恐怖を感じていた。悪魔の存在。そして、そのあまりの禍々しさに。


「海斗、すまない。全て事実だ。私は息子を捨て、お前にまで‥。本当にすまない‥。」


そこまでいうと学級委員長は倒れた。


「ククク、奴にはもう消えてもらった。
成仏などさせない。永遠に苦しむことだろう、我々の世界で。
しかし、この封筒がなぜここにあるのか。」


悪魔は海斗に近付くと耳元に囁いた。


「ミカミさんに伝えといてくれ、借りは返すと。ククク。」


三上さん?どうやら先生のことではなさそうだ。


「一ヶ月‥空白の一ヶ月ってなんですか?」


海斗はおそるおそる聞いてみた。


「知らないほうがいい。ただ、オレはよく知ってるがな。さらばだ。」


悪魔はその言葉を最後に消えた。
後に残ったのは、ぼんやりとつっ立っている三上先生だけだった。


「西村君、あたし何か記憶が飛んでるみたい。」


「三上先生、オレの空白の一ヶ月教えてください。」


すると、三上先生はびっくりした表情で海斗を見た。


「わかったわ。でもなぜ私に行き着いたの?」


「悪魔が、今。借りは返すと。」


「そう‥とりあえず座りなさい。」


三上先生は動揺しているようだ。
海斗は言われるがままに丸椅子に腰かけた。
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