恋と魔術のはじめ方
……。

…。

あれから、数時間の時が流れた。いつの間にか夕陽が西の彼方にぼんやりと浮かんでいる。

ここはスフィルノの街の中心に位置する噴水広場。

噴水では誰かを待つ、黒ローブに身を包んだ小さな魔術士が見える。

噴水の石段で魔術士ライラックは、昼間に約束した少女が来るのを待ちわびていたのだ。

噴水広場を行き交う人々の影が、本人よりも長く地面に映っていた。

夕刻前に目覚めたライラックはそれらをぼけっーと見て時間を潰していたのだが、段々と飽きてきたのだ。

『…このまま、来なかったりして…』

小声でそう呟いたが、一瞬つまらなさそうな顔を見せた。

昼過ぎにここにいた観衆の何人かが、あちらこちらにこの噴水広場に見える。

どうやら、昼間の騒ぎの結果が気になって見に来たようだ。チラチラ噴水で待つライラックに目を向けているが、昼間のライラックの牽制が効いたのか、ある一定の距離以上はあけている。

『…』

当人のライラックはそれを知ってか知らずか、気にする様子もなくただぼけっーと前を見つめている。

そこへ…。
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