【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
 志望校、名前、受験番号、出身中学。

 これらを記入漏れがないように、早くも丁寧に…書いていく。

 早瀬 春(ハヤセ シュン)、それが私の名前。


 問題を見た瞬間、私は驚いた。


 ――――文章の種が、いつもと違う。


 まるで志賀直哉の小説が芥川龍之介の小説に変わったかのような、それほどの変化。


 …落ち着かなきゃ。

 確かに文章は難しくなったかもしれない。でも、それは私にとってだけじゃない。

 みんなきっと…驚いてる。


 多少の異常には対応できるように、他県の過去問も、かなり解いてきた。

 大丈夫。


 第一希望という、とてつもないプレッシャー。

 私立に行けば莫大なお金がいるという…責任感もあった。


 でも…無駄な事を考えているような余裕はない。

 目の前の問題に取り組むだけで精一杯だった。


 むしろその方がいいだろう。


 最初に出てきた漢字の読み仮名二問は正直受験生をなめてるのかと思うほど簡単だった。

 …ちょっと安心。


 こんな調子で、時々かなり頭を悩ませつつも、どうにか国語を乗り切った。


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