【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
「確かにクラスも離れて、今までほどには一緒にいられないと思うけど。だけど、絶対に春のこと忘れないよ?忘れるわけないじゃん」

「…藤架……っ」


「…ごめんね」


 突然謝ったのは、紀野ちゃん。

 どうして?どうして紀野ちゃんが謝るの?


「やっぱ…さ、中学と、テンションとか違うじゃん?どうすればいいかわかんなくて、結局いつも通りみたいになっちゃって」

「ちが…っ違うよ!確かに結構焦ったけど、紀野ちゃんが声掛けてくれてよかったって思ってるよ?」


 …それは。

 藤架の言葉で、もし誰も声を掛けてくれなかったらって、そう考えることができたからこそ言えること。


「私、誰かに自分から声掛けるとかできないから…」


 中学の子達と馴染めたのも、勝人と藤架が居たからだったんだ。

 幾たびいろんな人に救われてきたことを、今ようやく自覚した。


「…じゃぁさ」

「え?」


「今日はみんなで帰ろうよ」


 そういってにっこり笑った藤架。


「紀野ちゃんも、遅くなったけどこれからよろしくね」

「うんっ!」


 …二人とも、ありがとう。

 ここには居ないけど、勝人も。


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