偽りの僕になりたい

恋心

高校生活も一年が過ぎようとした頃、初めて恋をした。

同じ学校の先輩だった。

部活が同じでよく面倒を見てもらっていた。

それまでは「自分は施設にいる人間」と自分自身でレッテルを張り、なかなか前に踏み出せなかった。

誰かと付き合っても俺の行動には限界がある。

バンドもそれが理由で諦めざるをえなかった。

もしうまくいってもお互い辛いだけ。

わかりきった事だった。

施設に入った時点で俺は「普通」じゃない。

それが普通の恋をできる訳ない。

みんなと同じように、買い物に行ったりカラオケやボーリングに行ったりファーストフードを食べたり。

そんな事に憧れていた自分に彼女なんて辛いだけ。

その通りだった。

青春の二文字が憎いとまで思った。

そして俺は自分の気持ちだけ伝え、忘れて下さいと一言だけ言い悔しさを胸にしまった。
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