俺様婚約者~お見合いからの始まり~
…そう、彼女が欲しい。

嫌がられても、拒まれても、諦めない。

もしかしたら一生、彼女に愛される事はないかも知れない。

俺の一方的な思いだ。

…それでもいい。

自分でも何故なのか分からないけれど、何年経ってもその気持ちは変わらなかった。

これからも、変わる事はないだろう。

彼女の事はまだ何も知らないけれど、これからも今まで以上に愛していくだろう。

子供の頃に諦めたはずの音楽だって、実は全然、情熱が冷めた訳ではないのだ。

俺はじっくりと物事にとことん拘る執拗なタイプの人間みたいだ。

今さら自分が分かってフッと可笑しくなる。

「…悠斗さん?」

鹿島常務が心配そうに俺を見ている。

「あ、すみません、色々考えていたもので…。

百合子さんにはまた、ご連絡させていただきますよ」

彼女はホッとした笑顔を見せた。

「よろしくお願いいたします。…今後とも」

「こちらこそ」

その時フワリと風が舞い、紅い木の葉がひらりと舞った。



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