はつこい―最後の恋であるように―
そうして28歳の春。
俺と咲恵は結婚式をあげた。


披露宴で、君はずっと、
嬉しそうに微笑みながら涙をこぼしていた。

その幸せそうな顔が、
俺には嬉しかった。


君の涙を見るのは、
あのお通夜以来だったから。



そんな君がそれまで以上に泣いていたのは、
小学校から高校、現在に至るまでの
俺との思い出を語った田野のスピーチだった。


彼女もきっと苦しかったのだろう。

想いを告げられないまま、
他の女を好きな男を
ただひたすら想い続けたのだから。



そんな君に田野は気付いているのだろうか。
スピーチを終え、俺達に一礼すると、
君の隣の席へと戻って行った。
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