幻想館-赤ずきん編-

空間

何だか少しだけ、心地よい風が頬をかすめた。


顔を上げて目の前を見ると、変わった建物があった。


・・・げん・・・そう・・・かん・・・?


黒い壁にステンドグラスの丸い窓。

「幻想館」と書かれた看板がユラユラと揺れていた。


少女はその建物の中へ、すーっと吸い込まれるように入って行った。


店?・・・の中は、やはり薄暗かった。

ランタンの灯火が、ぼんやりと辺りを照らしているだけだった。



「あの・・・すみません・・・誰か、いませんかぁ?」


手探りで少しずつ奥へ進んで行く。


その時、薄暗い闇の中からふわぁっと人影が浮かんできた。


「きゃぁ!」


思わず、叫んでしまった・・・


「すみません、驚かしてしまいましたか?」

とても優しい響きの声だ。


次第に目が馴れてきたのか、その声の持ち主の姿が、はっきり見えてきた。



・・・銀色の髪・・・?


真っ先に目に映ったのは、銀色の長いストレートヘアーだった。


「こんにちは!」


「ようこそ、幻想館へ」


透き通った肌に、優しい眼差し。


ブルーの瞳に長いまつげ。


男性?・・・それとも女性?


何だか不思議な感覚だった。


「あの・・・ここは何を売っているんですか?」

「いえ・・・売り物はありません」
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