泣き顔にサヨナラのキス
やっと逢える。
そう想った。
角を曲がったところで、孝太のアパートの前に一台のタクシーが止まるのが見えた。
タイミングよく孝太が帰ってきたんだと嬉しくなる。
「今タクシーが止まっている辺りで一人降ります」
運転手さんにそう告げると、返事と同時に減速していく。
少し距離があっても、タクシーから降りてきたのが孝太だと雰囲気でわかる。
孝太は何故か、前屈みになって、今降りたばかりのシートを覗き込んだ。