泣き顔にサヨナラのキス
これからの事を簡単に説明すると、二人は引き継ぎのために取引先へと向かった。
伊藤課長、会社辞めちゃうんだ。でも、どうして?
その理由を知ったのは、十日後の金曜日のことだった。
残業している原口係長に缶コーヒーを手渡した。
「お疲れです」
「おっ、サンキュー」
大きく伸びをして、首をポキポキ鳴らす原口係長。
「仕事終わったのか?」
「はい、もう帰ろうかと」
「そっか、気を付けて帰れよ。お疲れ」
直ぐにパソコンに視線を戻して、難しい顔になる。
缶コーヒーの存在、忘れてますよ。とは言わずに帰り支度を始めた。