泣き顔にサヨナラのキス
涼子さんの薄紅色の唇が、キュッと結ばれたように見えた。
口を開きかけたとき、あたしよりも早く、原口係長が「付き合ってねえよ」と言い切った。
「そうなの?」
ホッとしたように微笑む涼子さん。
「そ、俺、野上にフラれたからな」
その原口係長の台詞に、手に持っていたビアグラスを落としそうになる。
「なっ、何言っているんですかっ」
「そうじゃないか」
「いや、どうでしょう?」
「……お前は、長嶋監督か?」
恨めしそうにあたしを睨んで、それから。
「後悔すんなよ」と笑った。