泣き顔にサヨナラのキス
それは、あまりにも唐突な一言だった。
「婚約を解消して欲しい」
その言葉をまるで、映画でも観ているような感覚で聞いていた。
亜美の肩が震えている。 涙を我慢しているのかもしれない。
俯いている亜美を抱きしめようと、手を伸ばしかけてそれを止めた。
全てを拒否するように、亜美が俺に背を向けたからだ。
「どうして……」
亜美にではなく、自分自身に向けて言った言葉だった。
どうして俺は、ほっとしているんだ……