泣き顔にサヨナラのキス
「お前さ、何緊張してんだよ?」
「なんか、雰囲気が素敵で」
「美味いから、楽しみにしていろ」
「はい。……あの、けんちゃんって」
「俺の名前」
「知ってます。
なんか、……けんちゃんって笑えます。あはは」
だって、いつも無表情で黙っていると怒っているように見える原口係長に『けんちゃん』って。
「今日、割り勘な」
「ええっ!!そんな……」
「……あんまり、笑うなよ。俺だって恥ずかしいけど、何回言ってもアイツ、そう呼ぶから」
そう言って、原口係長はプイッとそっぽを向いた。