群青の月
反射的に振り返った俺は、フェンスから少し離れた場所に立っていた女を咄嗟に睨んでいた。


驚く程に綺麗な顔立ちの彼女を、グッと見据える。


「……お前、誰?」


冷たく訊くと、女は気怠(ケダル)そうな顔で咥えていたタバコを口から離し、ゆっくりと煙を吐いた。


「ただの通りすがりの女」


呟くように答えた彼女は、その瞳に俺を映してはいなくて…


夜空を仰ぎながらため息をついたかと思うと、タバコを携帯灰皿に押し込んだ。


そして…


「飛び降りるの?」


女は、俺の瞳を真っ直ぐ見つめた――…。


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