群青の月
「お前、おもしろいな」


男は、瞳をフワリと柔らかく緩めて笑った。


その表情には、さっきまでの鋭い瞳なんてどこにも無い。


あんな瞳(メ)を見せた人間がこんなにも柔らかく笑えるものなのかと、少しだけ驚いてしまった。


「……そんな風に言われたのは初めてだよ」


そんな気持ちを隠すように淡々と答えると、男はクスッと笑った後、フェンスを軽々と登って戻って来た。


「いいの?」


自殺しなくて……


後に続く言葉は心の中で唱え、相変わらず笑みを浮かべている男をじっと見た。


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