群青の月
心臓がドキリと音を立てたのは、柚葉がため息をついた瞬間だった。


柚葉の表情を窺おうと恐る恐る視線を動かすと、彼女の手がまだ震えたままだって事に気付いた。


「柚……」


「いいよ……」


咄嗟に顔を上げた瞬間、柚葉が俺の呼び掛けを遮るように小さく呟いた。


「え……?今、何て……」


一瞬だけ制止してしまった俺は、慌てて訊き返した。


「だから……いいよ、って言ったの」


今度はすぐに、その言葉を理解出来た。


どこか戸惑いを残したような柚葉の瞳が、大きく揺れている。


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