群青の月
「……眠れないか?」


不意に囁くように尋ねられて少しだけ顔を上げると、冬夜が心配そうな表情であたしを見ていた。


「気分はどうだ?気持ち悪くないか?」


何となく気まずくて、黙ったまま視線を逸らす。


すると、冬夜があたしの顎に手を掛けて顔を上げさせた。


「顔色は良さそうだな」


ホッとしたように言った彼が、穏やかに微笑む。


「大丈夫だから……」


向けられた優しい眼差しに戸惑って視線を泳がせると、冬夜は楽しげな笑い声を小さく漏らした後、あたしの顎からそっと手を離した。


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