群青の月
「何だ、そんな事か……」


ハッと笑った冬夜の態度に苛立ちを感じたのは、たぶんどうしようもない事だったと思う。


冬夜が言った“そんな事”は、あたしの“彼への想いを表す精一杯”だったから…。


だからこそ、それを否定されてしまったようにしか思えなくて、苛立ちの後に悲しみも芽生えて来た。


「あたしは……」


「だったら何だよ?」


ハッキリとした口調で訊いた冬夜の瞳は、戸惑うあたしを真っ直ぐ見つめている。


言葉を失って目を伏せたあたしの左頬に、彼が繊細な物を扱うようにそっと触れた。


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