群青の月
「柚葉」


居た堪れない気持ちで目を伏せたあたしを、冬夜が甘さを含んだ声で呼んだ。


顔を上げるべきなのか悩んでいると、彼がそのままでいいと言うようにあたしをギュッと抱き寄せ、髪を優しく撫で始める。


「俺、すごく幸せなんだ。柚葉とこうして過ごせる事も、柚葉がいてくれる事も、今この瞬間も……。柚葉が絡む時間は全部、心の底から幸せだって思えるよ」


あたしの心と体は、もう充分過ぎるくらい満たされているのに…


冬夜によって優しく紡がれた言葉が、それよりももっとたくさんの幸せをそこに与えてくれた。


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