群青の月
「それにしても……あんな昔の企画書、よく取ってあったな。ある意味、タイムカプセルを掘り起こされた気分だったよ」


冗談めかして笑えば、怪訝な顔をしていた兄貴が口の端を上げた。


「俺は、見込みのある奴を自ら手放すような事はしねぇよ。今まではただ、チャンスを窺ってただけだ。今回だって、お前が会社を辞めてなくても声を掛けるつもりだったから、実家にあの企画書を持って行ってたんだよ」


兄貴の真意を知って目を見開き、程なくして小さな笑みが零れた。


意地を張っていた俺の事をそこまで考えていてくれたなんて、本当に有り難いと思う。


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