群青の月
「相変わらず、可愛いげのねぇ奴だな」


「いきなり欲しい物って言われても、すぐには浮かばねぇよ」


ため息混じりに笑うと、兄貴が眉を小さく寄せる。


「じゃあ、考えとけ。明日は休みだし、寂しい誕生日になりそうだな」


兄貴は残念そうな笑みを残して、大量の資料を片手にオフィスから出て行った。


あれだけの資料を持って社長室に戻る所を見ると、兄貴は夜中まで仕事をするつもりなのかもしれない。


そんな事を考えながら喫煙ルームに向かう途中、俺は前から歩いて来た数人の人達の中にいた女性を見て、目を大きく見開いた。


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