群青の月
家の近くまで戻って来た頃、様子を窺うように柚葉に視線を遣った。


「ちょっと寄り道してもいいか?行きたい所があるんだ」


彼女は、吸い終わったタバコを満杯(マンパイ)になっている灰皿に押し付け、煙をゆっくりと吐いた。


その仕種は、やっぱり綺麗だと思う。


「……運転手はアンタなんだから、どうせあたしが嫌がっても行き先は変わらないんでしょ」


久しぶりに口を開いた柚葉の言葉には、明らかに皮肉が込められていたけど…


俺はそれを了承の言葉だと解釈して、目の前の交差点を右折した。


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