群青の月
「柚葉の事……どうか、よろしくお願いします」


真っ直ぐに俺を見つめ、ハッキリとそう言った柚葉の母親。


その表情は、ちゃんと“母親の顔”をしていた気がする。


「はい……」


やっとの事で俺が発したのは、たった一言だけ。


それ以降、俺達が言葉を交わす事は無かった。


程なくして、タイミングを見計らったようにドアが開いて、柚葉が入って来た。


不安げな彼女に笑顔を向け、目配せで大丈夫だって事を伝える。


柚葉は顔に戸惑いの色を浮かべながらも、どこかホッとしたように表情を緩めた――…。


< 955 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop