歳の差レンアイ、似た者同士。
オレ、伊崎 秀介。

職業、医者。

大学病院で働く心臓外科医だ。

研修医を終えたばかりの、医局組織でいえば一番下っ端になる。

子供の頃の夢だった“サラリーマン”でいえば、平社員ってとこ。

ついでに言っておくと、彼女ナシ。

朝早く夜遅い生活で、女に出会う時間もない。

会うとすれば、心臓病のばあちゃんぐらいか?



『秀介?お見合いの話、どうするの?先方の娘さんは循環器内科の研修医をしてる美人な方で…』



仕事を終えてケータイを開けば、実家からの留守電。

お袋も凝りねぇな…

早く結婚させて、実家の病院を継がせようって魂胆が見え見えなんだよ!

無視だ、無視!!

まだ継ぐ気はねえし、家に帰る気もない。

病院の経営だって興味ナシ。

大学病院の医局組織のなかで、働きアリになってるほうがマシだ。




「おつかれ!イザキ帰らねーの?」

同期の医者、道重 律。

仕事終わりのくせにサッパリした顔しやがって…

「まだデータ整理終わってねえし」

「そか、んじゃお先」

「おう。柚希ちゃんによろしく」

そう言ったら、道重のやつ…嬉しそうな顔しちゃって。

帰りを急ぐ道重には、家でカワイイ嫁が待っている。

この医局のドアを出れば、奴の頭のなかは嫁で一杯になるだろう。

結婚もいいかもな…とか思う瞬間。

いや、

結婚=実家を継ぐってことになるから、無いな!

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