歳の差レンアイ、似た者同士。
手首を持ちあげる。

脈、触れる。

血圧十分ある。

「もう一度聞くけど、この子と別れてやってくんない?」

この状況で、何聞いてんだって感じだろうけど…

「オレは彼氏でも何でもないただの通りすがりの医者だけど、この子は大事な患者さんなんで。別れないなら、DVの可能性があるって通報してやってもいいけど?」

別れないって言ったら見殺しにするとか、そんなつもりもない。

でもコイツ、確実にビビってる。

“見殺しにされる”って…。

まぁ、コイツのしたことの罪は大きい。

多少脅してやるくらいでちょうどいいかもな。



救急車が到着して収容されていく男。

「先生も同乗お願いします」

げっ…

医者ってバレてる~!?

応急処置してた時点でバレて当たり前か…。

「どこに運びますか?」

「まず城東医大病院に当たってみます」

「…はぁ、そうですか…」

マズイぞ。

これはマズイ。

出血してる男よりも、オレのが顔色悪くね?

救急車に乗り込むとき、荻原紗英が追いかけてきて言った。

「先生っ…弘人だいじょうぶ?」

「たぶんね」

「よかった…」

男と女って、よくわからない。

一度好きになった人は、どんなにヒドイことをされても嫌いにはなれないのか。

“別れる”と言わせたけど、なんとなく敗北感が漂う。

「あと、事情説明しておいて」

そう言い残して、救急車は走り出した。
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