わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−
わたしがこの世に産まれた日


12月31日。

そう。
師走も師走な、大晦日。

世間が一番忙しいであろう日。
そんな慌ただしい日。


12時35分。
わたしはこの世に、産れた。



当時ママは28歳。
結婚して5年目。
やっと授かった赤ちゃん。

それがわたし。

両親はもちろん。
祖父や親戚に祝福されて、
健康に産まれて来た、
普通の女の子の赤ちゃん。

それがわたし。



当たり前だが、
これからわたしに降り懸かる出来事など、
知る人はまだ誰もも居るはずもなく。

もちろんわたしも。
わたしが産まれたことを喜んでくれた人達も。

……ね。





初めて産まれた女の子だけあって、
両親はもちろん、
沢山の人に可愛がってもらって、
特に大きな病気も怪我もすることもなく、
わたしはすくすくと少しずつ健康に成長していった。



多分いろいろな場所に連れて行ってもらったと思うし、
いろいろな大人に遊んで貰ったと思う。
だって本当に普通の女の子の赤ちゃんだったんだから。

きっと何処にでも在るような、
一般的な幸せな家族だったんじゃないかな。




わたしが幼稚園に入るまでは。



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