わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−


「びょう、いん?」

「そうだよー」




着いた場所は知っているのに、
何時もと全然違う場所みたいだった。



入口も受け付けも、
何時も同じ場所なのに全然違う。


狭い待ち合い室で、
ママに抱かれ咳込みながら待っていると、
名前を呼ばれ、知らない場所に連れていかれる。


苦しくて、訳がわからないまま、
初めて入る夜間救急処置室を、
きょろきょろ見渡してるいると、
看護師さんの指示で、
わたしはママの腕の中から、
診察用のベッドに下ろされた。


夜勤の内科の先生がやって来て、
両親が挨拶をしたあとに、
わたしの症状を話す。


先生が聴診器を耳に嵌めると、
看護師さんがわたしのパジャマを捲る。


「じゃあ、おーきく深呼吸出来るかな?」

「はい、吸ってー!」

「おーきく吐いてー!」


苦しくて、苦しくて
なかなか大きくなんて出来なかったけど、
やっぱり自分でも変な音がまた聞こえた。
ぜぇーぜぇー。
ひゅーひゅー。



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