わたしはね、ママを選んで産まれて来たの。 −上−


2時間以上経って、
やっと点滴が終わった。

最初はまだぜぇーぜぇー苦しかったけど、
しばらくして少しずつ治まってきたみたいだった。


点滴の間に、
他の夜間救急患者さんが来た。

わたしより大きい男の子だった。
その子も喘息だったらしく、
吸入だけして帰って行ったみたいだった。



点滴が終わると、
ママが看護師さんを読んでくれた。

看護師さんは慣れた手つきで、
針を固定していたテーピングを剥がして、
針を抜いて、そこにシールを貼ってくれた。


「お疲れ様、よく頑張ったねー」


そう褒めてくれた看護師さんは、
先生を呼んできて、
また胸と背中の音を聞かれた。


「今回はもう大丈夫みたいですね。今日は特にお薬は出しませんので、近いうちに外来の小児科でまたちゃんと診てもらって下さい」

「はい、ありがとうございました」

「この子は、お金が掛かる子だと思うので…覚悟しておいた方がいいかもしれませんね」

「…はい」

「では、お大事に」

「はい、お世話になりました」


点滴の効果でケロッと元気になったわたしは、
先生に「ありがとうございました」と言って、
看護師にバイバイと手を振って、
診察室と喫煙所とうろうろした挙げ句、
結局待ち合い室で寝てしまっていた父を起こして、
帰りの車に乗り込んだ。


「夜中のドライブみたいで楽しい!!」


ママも父も笑っていたけど、
これが度々起きる習慣になってしまうとは思っていなかった。



そして、
このとき先生とママが交わした最後の言葉は、
正直3歳だったわたしには覚えがない。
ママから聞いて、
初めて知ったことだった。





ママ、ごめんね。
病弱に産まれて来ちゃって。



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