偽りの人魚姫
1.彼女はしゃべれない
最近気になるやつがいる。
 
別に好きだとか、そんなんじゃない。
 
ホントにただの好奇心。
 
いつも黙って窓際の指定席に座ってる。
 
それこそ、そこにしか君の世界はないんじゃないかって思うくらい。
 
今は日に当たりながら、本を読んでいる。
 
いつも耳にしてる紫のiPodから伸びる紫のイヤホンもちゃっかりそこに収まっていて。
 
周りは完璧無視。
 
自分の世界。
 
無駄に目のいい俺は、少し離れたこの席からでもその本の表紙を読むことが出来るのだけど。
 
なんて言えばいいんだろう。
 
別に俺はそんなに馬鹿じゃないと思う。
 
だって日本語は読める。
 
でも、あの本の題名は俺には理解不能。
 
漢字とひらがなだけど、あれは日本語じゃないはずだ。
 
内容は分かんないけど、難しいんだろうなと思う。
 
彼女、めっちゃ額に眉よせてるし。
 
あ、あれはいつもか。
 
彼女はいっつも額に眉がよってる。
 
本を持ってない時もそうだから、多分、本の解読に困ってる訳じゃないだろう。
 
なにが、つまんないんだろうか。
 
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