偽りの人魚姫
4.教科書はロッカーの中
よっさんこと吉田義人は俺の中学からの友達。バンド仲間。
 
金髪ピアスの俺とは対照的に黒髪メガネのザ・優等生。
 
昔はよく、周りにはなんで俺らが友達なのか疑問に思わていた。
 
まあ、今もだけど。
 
3組の教室のドアを力を込めて開ける。
 
3組のドアは、昔誰かが思いっきりぶつかったせいで歪んでしまっていて、開ける時に割と力がいるんだ。
 
しかも、ギギッだか、ガガッだか、たいそう耳障りな音を立てる。
 
身体が通る分だけ開けて、教室に入ると、ドアが立てた音のせいでこちらを見ている人 
 
数名。
 
慣れている人は、なんも反応してない。
 
「誠也じゃん。なに、義人?」
 
ドア際にいるやつが話しかけてきた。
 
俺はよく義人を訪ねに来るから、このクラスで知名度が高い。
 
というより、目立ちたがり屋な上に金髪でピアスなもんだから、この学年で俺を知らないやつなんていないかもしれない。
 
軽音でライブもやってるしね。
 
それと、俺の人徳がなせる業かな、なんちって。

「そう、呼び出されちった。なんだろ、告白かな。どうやって断ろう。」
 
「カツアゲの間違いじゃね?体育館裏に誘われたら気をつけろよ。」
 
「大丈夫。義人、俺が金持ってないの知ってるし。」
 
「あっそう。で、その義人様がこっち睨んでるけど、いいわけ?」
 
言われて、窓際の方を見ると、逆光で表情がよく分からない義人が目に映る。
 
「あれ、睨んでんの?」
 
「なんか、黒いオーラ出てね?」
 
「逆光のせいでなんも分かんねぇ。」
 
「取り敢えず、義人んとこ行ってこいよ。」
 
「おう、んじゃ。」
 
俺は、ドア際君に軽く手を振って、義人の待つ窓際へ。
 
名前も知らないけど、ドア際君はいいやつだ。
 
そして、正しかった。
 
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