王様の、言うとおり



チラっと見たキングの手首。

私はその白い包帯の奥の生々しい傷が見えてしまい、無意識に顔が歪んでいたのに気付いて慌てて戻します。



「……それに。正直今は森田の事なんてどうでも良い。」



そう言ったきり、口を閉じて海を見つめるキング。

入りたかったのでしょうか。

それとも、別の事を考えているのでしょうか。



キングは、いつもと違い、私の調子を狂わせます。



「煌が泳げないはず無いのに。アホだよな、森田も。」

耳元で言ってきた亮平くんに、私はコクコクと頷きました。





【じゅうろく。王様と海】


     ごめん


 謝ったキングがいつもと違い
  聞きたいのに聞けない
 どうしたら良いのでしょうか。

 きっと、海をただ見つめる
  キングが考えている事は

    昨日の事――――







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