白銀の女神 紅の王Ⅱ
私たちには皆が思うような身分の差の前に、大きな壁があった。
それは私が能力者であるが所以の事で…
王族のシルバにとっては王家の存続にかかわること。
今はもう消えてしまったけど、少し前までは能力者だった私の血を受け継いだ子供が能力を継いでしまったらどうしよう。
白銀の髪を持って産まれてきたらどうしよう。
私は耐えられるけど子供にまで私の不幸を味あわせたくない…
そんな不安が常に渦巻いていた。
けど、そんな不安を口にする度にシルバは私の不安を解いてくれる。
不器用で荒っぽい言葉だけど、ちゃんと私を安心させてくれるような言葉をくれた。
「怒られるって…」
何も知らないニーナはポツリと呟く。
けれど、次の瞬間にはクスクスと笑ってシーツを整える手を動かし始めた。
「シルバ様はよほどエレナ様に逃げられたくないんでしょうね」
ボンッと私も顔を赤らめた時だった。
「誰が誰にだ?」
「シルバ!」
いつの間にか後宮内にいたシルバが不服そうにこちらを見据えていた。
思わぬ本人の登場に驚いたのは私だけではなく…
「シルバ様ッ!あああああの!今のは…」
「今のは何だ?」
あくまで冷静に問うシルバにいよいよ焦るニーナからは冷や汗が滲む。
そして、引きつった笑みを浮かべながら遠慮がちに口を開いた。