白銀の女神 紅の王Ⅱ



「あぁ、そうだ。」


頭を抱えながらそう言う。

エレナの言葉は、一緒に寝てくれと言っている様なものだ。

しかし本人にはその自覚はない。

恐らく、慣れない土地しかもテントで寝る事に不安を感じているのだ。

無自覚ほど厄介なものはないな…




「テントは見張りをつけておく。」


そう言って、その場を離れようとした時。




クイッ…―――――

控え目に衣服を掴む感触。

誰が引きとめたのかは明白で…




「………エレナ。」


溜息をつき、振り返ると…




「ッ……ごめんなさい。」


ハッと息を飲み、小さく謝るエレナ。

本人も無自覚だったらしい。

みるみるうちに赤くなる頬。




「あ、あの…今のは忘れて下さい。ウィルによろしくお伝えください。」


一気にまくし立て、クルッと背を向けるエレナ。



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