白銀の女神 紅の王Ⅱ



王城一階――――


吹き抜けの廊下から外を見渡す。

つい先ほどまでポツリポツリと間隔の長い雨だったのに、だんだんと間隔が短くなってきている。




「結構降ってきたわね。」


答えるわけでもないニコに向かってそう言う。

案の定ニコは、なになに?とでも言いたげな目で見上げる。

そんな仕草も可愛く、クスッと笑って「なんでもないわ」と答える。




「これを返したら体拭いてあげるわね?」



雨で少し濡れたニコ。

早く体を拭いてあげたくて、急ぎ足で炊事場へと向かう。






そして、その入り口にさしかかった時――――


ヒソヒソと小さな声で話す侍女たちの声が耳に入った。

そこで堂々と入って行けばよかったものの、私は立ち止まってしまった。



何を話しているの……?



息をひそめて耳をそばだてれば―――





「ねぇ聞いた?シルバ様にエスト王国からの縁談が来てるって。」



ッ………!!


廊下まで聞こえるか聞こえないかのぎりぎりのところで声を抑える侍女。

けれど、私の耳には確かに届いた。



縁談と言う言葉が……―――――



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