LOVE*PANIC
5th*PANIC「告白」



それから数日、一歌は毎日、一日中同じ曲を聴き続けてみたが、いい歌詞は浮かばなかった。


一歌はふと携帯電話に手を伸ばし、思い付くがままに、メモリーを開いた。


何の意図があったわけでもなく、完全に単なる暇潰しだ。


そして、メモリーの一番上にある名前が目についた。


「浅田修二」 の四文字。


一瞬、電話をかけてみようか、という考えが一歌の頭の中に過ったが、すぐにその考えを消した。


自分が修二に電話をかける理由はない。


それに、修二は多忙だろうから、電話をしたところで、出てはもらえないだろう。


一歌はそう考え、携帯電話を手離した。


一歌は売れていないせいか、芸能人のわりに地味な生活を送っていた。


芸能人の友達なんて、殆どいないし、この世界に入る前の友達は皆、不規則な生活のせいで離れてしまっていた。


「何か寂しいな、あたし……」


一歌はベッドに仰向けになりながら、独り言を呟いた。


虚しい独り言が部屋に響く。


修二は今頃、大勢の人に囲まれながら仕事をしているのだろうか、とふいに考えた。


同じ世界にいるにも関わらず、違う世界にいるような人。


もし、今回の仕事が成功したら、自分も修二と同じ場所に立てるのだろうか。


そうしたら、好きだと、伝えられるのだろうか。


一歌は今初めて、気持ちを伝えるということを考え、すぐに、でも、と思った。


伝えないだろう。


例え、今回の仕事が成功して、人気アーティストの一員になれたとしても、伝えることはないだろう。


だって、伝える意味がないのだ。


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