月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「宋春が張湯を連れてきて、彼を生かすためには力を使わなければならなりませんでした。」
宋春の名に、礼は揺れた。
話を、進ませたい。
「張湯?」
「もう一人の黒幕である蒙御史大夫の弟です。」
蒙御史大夫。
礼には顔すら浮かばない。
御史大夫ならば、朝議でも顔をあわせているはずだ。
「雉院は、蒙御史夫をも利用していました。
彼は、禁牢の鍵を渡す代わりに、自分の弟の暗殺を雉院に頼んだのです。」
礼は眉をひそめた。
「禁牢は、清罪宮のにありますが、杜廷尉ではなく御史大夫の管轄です。
王以外、誰も禁牢は開けられない。
雉院は私を殺すわけにはいかないので、隠し通せる場所が必要でした。
雉院が飛燕の中に入ってしまえば私にもどうしようもない。
武則天様に言われたと思いますが、“天の真実”は語ってはいけません。」
「ええ、土の君様に言われたわ。
秩序が乱れるって。」