37度の微熱
「俺、帰るわ」

冷めた目で俺は二人を見て、静かに言った。


「安輝!?」

その一言に弥生は驚いている。


「お幸せに」


早口で俺は二人に言って、その場を離れた。

後ろから弥生の声が聞こえたけど、俺は聞こえていないふりをして。




あの二人はきっとまた、よりを戻すだろう。




そして明日になれば、二人で笑っている姿をどこかで見つけるんだ。



心の底から、弥生の幸せを願うことができないのはどうしてだろう。


相手があの男だからか、


弥生が心配だからなのか。



理由なんてまだ分からない。

でも、俺は心の中で、小さく弥生の幸せを願った。


きっともう弥生とは会わない。




俺は小さく「さよなら」と、呟いた。





< 47 / 68 >

この作品をシェア

pagetop