モノクローム
次の日から、私達は忙しかった。
正確に言うと、彼が慌ただしく騒ぎながら、子供みたいにはしゃいでいた。

例えるなら、初めての修学旅行に備えた中学生みたいな感じ。
毎日のように買い物に繰り出しては、必要のある物からそうでない物まで買い込んで、見るからに浮足立ってた。
そんな彼に私は付き合わされている。

ずっと手錠を外した状態で…


明日、私達は東京へ行く。
そこに何が待ってるかなんて解らない。
でも、きっと何かがあるような、そんな気がする。



あんなにこだわってた手錠を彼はバッグに入れなかった。
それが何よりの証拠。



「あ。忘れてた…」


「なに?」



彼は荷物ではち切れそうなバッグを無理矢理に閉めてバスルームに足を運び、直ぐに戻って来て目の前にヘアカラーを差し出した。




「ほら、これ。明日で一週間じゃん、向こう行ったら染められるだろ?」



そう言えば、そんな約束したっけ…と言うか、一週間って数えてたのかな?
そんなこと思ったら急に恥ずかしくなって、バッグに入れようとする手を止めた。




「いいよ…昨日終わったし…」



言ってて更に恥ずかしくなった。
なのに、彼は全然気にも止めない。




「あっそ。んじゃ、今日染めよ」



そう言って笑う彼に、私は何も言う気が起こらず黙って頷く。
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