モノクローム
俺の事を最初に[シロ]って呼んだのは彼女で、髪を染めた時も車を選ぶ時も、彼女の言葉を優先させた。
ただ、名前だけは必ず訂正した。
彼女にも周りにも。
別にこだわる理由は無いし、あだ名だと思ってればいいんだけど、それまでずっと[シュン]って呼ばれてたから、それにはどうも慣れなくて…

なのに、誰も気付いてくれない。
皆、そっちのほうが合ってるって口を揃えて言うから、まぁいいや。って思ってた。
リリーに本名を教えるまでは。


あの時、リリーは人懐っこいって言うか、強引…ともまた違うけど、とにかく会話すると話題が尽きなくて、アドレス交換もリリーの方が持ち掛けて、それからサイトは利用しなくなって、代わりにメールを頻繁にするようになった。

頻繁って言っても、リリーから来るメールに何となく返信してた感じかな。
色々、家庭の話から旦那の愚痴や楽しい話までして来て、最初は「なんだ、こいつ」とか思ってたけど、そのうち親近感みたいなもん感じて、いつの間にか相談役みたいになってた。

そんな中でリリーが俺の本名を訊いて来て、その時も何となく教えた。
特に嘘吐く必要もないし、別にいいか。って
そしたら、ちゃんと名前で呼んでくれてさ。


まぁ、たまに間違えてたけど…
それでも、自分で訂正して[春]って言ってくれるのが嬉しかった。
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