恋華(れんげ)
「え…いま何時よ……」

眠い目をこすりながら壁掛け時計を見ると、2時17分だった…。

「ピロロロロロ…♪ ピロロロロロ…♪」

「こんな夜中に誰だよ……」

相手によっては寝たフリをして無視しようと思いながら、ケータイを手に取ってみると画面に“松野真紀”と表示されていた。


松野さんは同僚の保険外交員で、かつてあたしのライバルだった女。

…といっても、以前は2人で営業成績の最下位争いをしていただけなんだけどね……。

だから、あたしが秋吉の魔法でトップ保険外交員になってからは、松野さんが最下位を単独キープし続けていた。



特に親しいワケじゃないけど、松野さんなら無視するワケにもいかないか……。

あたしは電話に出ることにした。


「もしもし…」

「もしもし、池田さん?あたし、松野ですけど…こんな時間にごめんなさい…寝てましたよね……?」

「まぁね…」
< 50 / 201 >

この作品をシェア

pagetop