裸足のシンデレラ
「魔法使いは俺だ。」

「え…?」


え…もしかして…今の聞こえて…?


「俺がお前の声を聞き逃したことなんてあったか?」

「……。」


いつになく真剣な声でそういう瞬。
いつもと違う声とその表情にどうしていいか分からなくなる。


「不本意だけどな、脚本上、俺はシンデレラに魔法をかけなきゃなんねぇ。」

「不本意って…。」

「でもな、俺はシンデレラだけに魔法をかけるつもりはねぇよ。」

「え…?」

「お前にもかけてやる。
つーことでこんな茶番劇見てる暇なんてねぇんだよ!!ほら、戻んぞ。」

「うわっ…ちょっ…!!」


強引に肩を抱かれ、あたしは教室に戻る羽目になった。


「魔法使いなら今すぐ踊れるようにしてよ!!」

「うるせぇな…。お前はすぐラクな道に進もうとする…。
いいか?シンデレラだってな、辛い日々を過ごして修行してたから幸せが降ってきたんだ。
甘いちゃらんぽらんな生活してるお前に、そう簡単に幸せが降って来てたまるか!!」

「なっ…!!別にちゃらんぽらんな生活してないもん!!」

「どこがだよ?毎朝お前んちから聞こえてくる目覚ましで俺がどんだけ迷惑してると思ってんだ?」

「ちゃんと止めてるもん!!」

「起きねぇくせに…。」

「放っといて!!」

「まったくあんたたちは…。」


里穂がやれやれといった表情を浮かべてあたしたちを見た。




< 12 / 107 >

この作品をシェア

pagetop