*恋文戦線*





信じられない事に、本当にこの男は鈴鹿家で夕食を一緒にとり、実にスマートに“家族公認”というステータスを取得して帰っていった。

『ちょっと!ひな姉ちゃんに彼氏とか…にわかに信じがたいんだけど!しかもイケメン!』

『…。ぐずっ』

『ほらー。お父さん泣かないでー。私は良いと思うよ?可愛い妹にいい彼氏が出来て。』

『透哉くん!遠慮しないで食べてねー!ほら、ひな!ボーっとしてないで透哉くんにお茶注ぎなさいよ。』

『熱下がった所なのに病み上がりをむやみやたらに使わないでクダサイ。後、好き放題言い過ぎだから!違うから!色々ほんと違うから!』

…思い出しただけで頭が痛い。


家族に見送られ、爽やかに帰って行った狐男からメールが来た。


“今度の日曜日、映画館に行こう。”


映画。


映画とはまたベタな。


ひなは渡辺が買って来たポカリを手に収めながら、奴の顔を思い浮かべた。

ちょっと、本気で心配していた、意外な顔。


「………。」


ひなはしかめっ面をしながら手早く返信する。


“ホラーと血しぶきアクション以外なら行ってもいい。”

パタンと携帯を閉じ、ぼすっとベッドに横になった。

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