世界が終わる前に


一体、これは何事だろう。

理解を超える光景に私は目を瞬かせ、ごくり、生唾と驚きを一緒に飲み込んだ。



だって。

だって、だって。


視線の先、


酷く気怠そうな様子でスラックスのポケットに両手を突っ込み、学ランとは不釣り合いな煙草を加えながら、目の前のガードレールに凭れ掛かっているのは――…



私が心の奥底から、待ち焦がれていた人。

行き交う人波に、いつも見果てぬ彼の面影を探していた。



そう思った瞬間、無性に胸の奥がギュッと締め付けられて、苦しくなった。



相変わらず、やけに大人びたクールな雰囲気を纏う彼は、こんなにも間近な今にも手が届きそうな位置にいるのにとても遠い存在に思える。



程よく着崩された黒い学ランと、さらさらとした艶やかな黒髪が夜の闇に溶け込んで、綺麗な口元にくわえられた煙草から出る紫煙が夜空に立ち上っては微睡(まどろ)む夜風に攫われてゆく。


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