世界が終わる前に


そこには、もう黒斗くんの姿は無かったけれど、私は興奮冷めやらぬまま、ぼんやりと自宅の門前を眺めた。


街頭もない住宅街を下弦の月の僅かな月明かりが朧げに、そこを照らし出してた。

まだ残る黒斗くんの背中の温もりと残像が、私の意識を占領する。


まだ脈打つ心臓は、止む事なくドクンドクンと音を奏でていた。






「…――奈緒、」



不意に後ろから聞こえたその柔らかい低い声にハッとし、慌てて振り返った視線の先には――…


すっかり閉め忘れ、開け放されていた扉に背を凭れながら、胸の前で腕組したお兄ちゃんが立っていた。



無表情なお兄ちゃんの身に纏う濃紺の制服は、無表情とは正反対に心なしか少し着崩れているような気がした。


< 147 / 202 >

この作品をシェア

pagetop